
日本における膝関節,関節鏡,スポーツ整形外科の歴史は長く,多くの偉大な先生方により築きあげられてきました.特に高木憲次先生,渡辺正毅先生を中心として日本で開発された関節鏡の歴史はそのまま世界の関節鏡の歴史でもあります.1974年,渡辺正毅先生が国際関節鏡学会の初代会長に就任され,「Father of Arthroscopy」の称号が与えられ,翌1975年には日本関節鏡学会および日本膝関節研究会が渡辺正毅先生を会長として設立されています.一方,1980年東京膝関節学会が設立(初代会長:伊勢亀冨士朗先生),2000年に日本関節鏡研究会と統合され,日本膝関節学会(初代会長:腰野富久先生)となりました.2009年,日本膝関節学会と日本関節鏡学会が発展的に統合され誕生したのが,日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会(JOSKAS)です.2013年7月1日より一般社団法人へ移行しています.このようにJOSKASは膝関節,関節鏡,スポーツ整形外科を牽引してきたいくつかの学会や研究会の流れを持つ,大変長い歴史を有する学会とも言えます.JOSKASでは渡辺正毅先生の偉大なご業績を称え,「Masaki Watanabe Award」を創設し,関節外科学において世界的な貢献をした正会員および外国人医師に授与させて頂いております.現在まで国内外14名の先生方が受賞されています.
JOSKASとしての第1回学術集会およびJOSKASセミナーは2009年に札幌にて開催されました.その後会員数も飛躍的に増加し, 2022年4月現在4400名を越えています.JOSKASの目的は「関節鏡,膝関節,スポーツ医学及びその関連分野に関する基礎的・臨床的研究の成果の発表の促進をはかり,ひいては整形外科学の発展に貢献することを目的とする」とあります.具体的には学術集会の開催,邦文学術雑誌(JOSKAS誌)および英文学術雑誌(AP-SMART:The Asia-Pacific Journal of Sports Medicine, Arthroscopy, Rehabilitation and Technology)の発行,国内外の関連学術団体との連携や提携などを積極的に行っています.国際的にはISAKOS(International Society of Arthroscopy, Knee Surgery and Orthopaedic Sports Medicine),APKASS(Asia-Pacific Knee, Arthroscopy and Sports Medicine Society)などの学会と連携しています.またSFA(フランス関節鏡学会),SIAGASCOT(Italian Society of Arthroscopy, Knee, Upper Limb, Sports, Cartilage and Orthopaedic Technologies)との国際トラベリングフェローなど多くの国際交流プロジェクトを進めています.関節鏡,膝関節,スポーツ医学を目指す若手医師やコメディカルの育成も喫緊の課題です.JOSKASセミナーの開催,研究助成,国内でのJOSKASフェローシップ,JOSKAS学会賞,Outstanding Young Investigator Awardなど多くのプロジェクトを進めています.国内では日本整形外科スポーツ医学会(JOSSM),日本臨床スポーツ医学会などとの連携が今後より一層重要となります.JOSSMとは2020年,2021年, 2022年の3年にわたり学術集会を合同開催いたしました.そして2023年には大きな転換期を迎えます.JOSSMとともに新たにスポーツに関する整形外科学・運動器科学及び関連する分野の諸科学を総合した学会が始動します.そして同時に膝関節に関する学問の進歩普及に貢献し,人類の健康と福祉の増進に寄与することを目的とする日本膝関節学会が誕生します.引き続き国内外の関連学会とより良い協調関係を築きあげていきたいと考えております.
今後とも会員の先生方ならびに関係各位のご協力,ご支援をお願いいたします.
日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会(JOSKAS)
(神戸大学大学院整形外科教授)
理事長 黒田良祐
